東日本大震災で亡くなった人たちに自分の思いを伝えたい。そんな願いをかなえるため岩手県大槌町に設置された電話ボックスをモチーフにした映画「風の電話」の公開が24日、始まった。「こういうものを描くと、どうしても説教臭い方向に走りがち。でも、実際に体験した方の思いが少しでも伝わってくれるといいかな」。出演した俳優の三浦友和さん(67)は、言葉を選びながら震災を描いた今作への思いを語った。震災で家族を亡くした少女を演じたヒロインのモトーラ世理奈さん(21)については「セリフのやりとりはほとんどない。でもとてもたくさんのやりとりをした感触がある。すごい女優さん」とたたえた。同作は、世界3大映画祭の一つ、第70回ベルリン国際映画祭(2月20日~3月1日)で上映される。出品されるのは、主に10代の若者向け作品が対象の「ジェネレーション14プラス」部門。【井上知大】
台本にセリフがない! 独特の諏訪監督の演出
映画は、震災で小学生の時に家族を亡くした少女が、高校生になって震災後初めて故郷を訪れる過程を追ったロードムービー。監督を務めたのは、1997年のロッテルダム映画祭NETPAC賞を受賞した「2/デュオ」や、フランスの名優ジャン・ピエール・レオーが主人公の映画「ライオンは今夜死ぬ」(2018年)などで知られる諏訪敦彦さん。三浦さんは、1999年のカンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した主演作「M/OTHER」以来の諏訪作品だ。
「今回の作品で諏訪さんとは2回目の仕事。2019年の1月か2月ごろ、あるパーティーでお会いしたのがきっかけ。その時は確かプロデューサーも一緒だった。諏訪さんから『今度、日本で久しぶりに撮ることになったので、そのときはよろしく』みたいな感じで声をかけられ、私も『こちらこそよろしくお願いします。何かあったら声かけてください』と。そんな雑談から。物語がどんなものかも何もない状態でした。その後、正式な話があって2019年の夏に撮影に入りました。最初はちゃんとした台本になっていた。諏訪さんではない方が書いたものでしたが。なので『今回は台本ありでやるのだな』と思っていたが、想像通り、最終的には本の骨格だけを残して、後はセリフが全部ないものに。『やっぱり諏訪組だな』と思いました」
諏訪監督は、セリフが一切なく、状況とその推移を示した「構成台本」をもとに、俳優と共に登場人物の感情の流れを作り上げる演出で知られる。「M/OTHER」で経験した諏訪監督の演出というのは、70年代から活躍する三浦さんにとっても印象深いものとなった。
「諏訪さんの撮影方法そのものは、特別新しいことというわけではなくて、日本でもアメリカやヨーロッパでもいろんな冒険をした人がいました。とはいえ、諏訪さんの作品に初めて出たときは『あっ、こういうものに自分が呼ばれたんだ』という風を感じました。実際に撮影で感じたのは、スタッフと俳優、プロデューサーといろんな役割があるけれど、みんな全体の中の一員なんだということを再認識させてもらったこと。デビューしてしばらくは、俳優は<そこ(スタッフのいる現場)に行って何かをする人>と思っていた。でもそうではなく、全体で何かを作り上げるチームの一人だと感じさせてくれる現場でした。今回の『風の電話』もそうですが、台本にセリフが書いていない。でもセリフを導いてくれるような内容のト書きがいっぱい書いてある。いわゆる構成台本で、ト書きというか、小説の一部のようなもの。セリフがないだけで、ストーリーはしっかりできてある。なので、とんでもないアドリブということではないです。大切なのは、そこから俳優たちは何を感じとるかということです。それに、撮影前に監督と大まかな話はしていて、その中で導かれる言葉がありますし、一方で延々としゃべり続けるわけにもいかないので、自分が削り取るものは削ってやっていきます。ただ、監督から現場で特別な指示はないんです。その方が逆に難しいし、でも面白いし。いつもこんなのでいいのかな、と思いながら現場が終わる(笑い)。でも「OK」って言葉がかかるので、まあ良いのだろうなと思うようにしています。映画は監督のものですからね(笑い)」
被災者の気持ちが伝わればいいかな
今作の主人公のハル(モトーラさん)は、大槌町出身の高校3年生。9歳の時に震災で両親と弟を亡くし、広島の叔母のもとで過ごしている。ある日、叔母が病気で倒れたショックで気を失っているところを、公平(三浦さん)に保護される。映画の序盤では、公平がほとんど口を利かないハルに夕飯を食べさせながら、妻子に逃げられ、認知症の母と2人暮らしだという身の上話をする。
「公平は、広島の豪雨で周りの人たちを亡くしたが、自分は偶然助かった。それでも妻子は逃げてしまい、認知症の自分の母親の介護をしている。また、妹が自死したつらい過去を持っている。将来が見えないし、自分はなんで生きているのだろう、となんとなく思っている人間。そこに、もっと絶望している女の子と出会ってしまう。公平は逆にその女の子を見て自分が再生していくみたいな気持ちになったんじゃないかな。そんなところは映画で描いていないですが。『自分よりもっとこの10代の子が抜け殻のようになっている。自分の絶望に比べれば、この子のはもっともっと深い絶望なんだろうな』と。そして『この子をなんとかしてあげたい』と思いながら、最後は何もできないまま別れる。結論のない出会いと別れですね」
公平に保護された後、駅まで送ってもらったハルは、衝動的に生まれ故郷の大槌町をヒッチハイクで目指すことを決める。ハルは旅路で、原発で働いていた森尾(西島秀俊さん)や、夫を強制収容されたクルド難民の家族、福島で暮らす森尾の知人の今田(西田敏行さん)らとの出会いを経て、少しずつ背中を押されながら最後、「風の電話」にたどりつく。
「こういうものを描くと、どうしても説教臭い方向に走りがち。でも、(そうではなく)実際に体験した方の思いが少しでも伝わってくれるとい…
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January 24, 2020 at 05:00AM
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