
1985年に『週刊少年ジャンプ』誌上で連載が始まった、北条司による大ヒットアクション漫画『シティーハンター』。2019年2月に公開された、20年ぶりの新作アニメにあたる『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』は興行収入15億円を超えるスマッシュヒットを記録。さらに、フランスでは公開から2週間で動員100万人を突破したという実写映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』が11月29日に日本公開されることも決定し、改めて『シティーハンター』の人気を印象づける形となった。
なぜ時代を超えて『シティーハンター』は愛され続けるのか――? 『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』でプロデューサーを務めた若林豪氏に話を聞いた。
取材・文・撮影/磯部正和
2019年は、シティーハンターイヤー
――『シティーハンターイヤー』という言葉も聞かれた2019年でしたが、若林さんがプロデュースした『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』は興収15億円を超える大ヒットを記録しましたね。
おかげさまで、ロングランとなり、10月30日には、ブルーレイとDVDを発売しました。原作者の北条司先生に改めて作品を確認していただいた上で、劇場公開版から50箇所ぐらい手を入れて、より良いものになったと思っています。

フィリップ・ラショー監督による実写版『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』が11月29日に日本公開、12月25日にはブルーレイボックスでテレビシリーズ『シティーハンター2』も出ます。年明けには東京で好評をいただいた原画展覧会『劇場版シティーハンター PRIVATE EXHIBITION』の大阪での開催を控えています。1年間ずっと『シティーハンター』の仕事を続けられたのは、非常に嬉しかったです。
――20年ぶりの新作が、ここまで盛り上がるというのは、企画段階から想定の範囲内だったのでしょうか?
期待とともに不安もありました。なにせ20年ぶりの新作ですからね。
――不安というのは、時代の変化なのでしょうか? ターゲット層は、純然たる『シティーハンター』のファンでしたか? それとも若い世代を取り込もうという意図はあったのでしょうか?
企画書に書いたのは「『シティーハンター』のベスト盤」のような映画を作りたい、ということでした。ベスト盤って、そのアーティストの一番有名な曲を揃えたもので、ファンにはたまらないし、そのアーティストを知らない人にとっては「これさえ聞けばそのアーティストの特徴が分かる」というもの。シティーハンターの代表的な要素を揃えることでファンには嬉しく、初心者には見やすいものにできたら、という思いでした。

(C)北条司/NSP・「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会
リアルタイムで連載を追った「大人な主人公の魅力」
――本企画を立ち上げたときに感じたプレッシャーは?
リメイク企画を作るとき、通常は過去作の要素を何か変えるのがスタンダードと思います。そこには技術的な進歩の側面もありますが、「前と同じことをやっていてもね……」というふうになりがちということがある。でも今回は、極力テレビシリーズ当時の雰囲気を匂わせたいという思いがありました。声優はオリジナルキャストを変えず、挿入歌は当時録音した主題歌をそのまま使うことであったり、総監督のこだま兼嗣さんは最新のCG技術を使うというよりは、アニメーターの作画の部分をよく見せることに力を入れてくれたり……今制作すれば自然に変わってしまう部分は出てくるので、できる範囲で以前の良い部分を踏襲しようとしました。

――結果的に、劇場には昔ながらのファンだけではなく、若い層も足を運んでくれていた印象があります。そのあたりはどう分析していますか?
もともと原作漫画が『週刊少年ジャンプ』で連載されていたので、若い世代に支持される魅力があると思います。「古臭くない」と感じさせることができれば、今の若い世代にも受け入れられるのではという思いはありました。
――『シティーハンター』が長く広い世代に愛される理由はどのようにお考えですか?
僕は小学生の時に、『週刊少年ジャンプ』で『シティーハンター』の連載を読んでいたんです。ジャンプといえば、少年の主人公が自分の夢や願望に正直に行動する姿にワクワクする作品が多いと思うんです。でも冴羽リョウは、自分の気持ちに嘘をついたりしていますよね。子供のころに読んでいて、そういう大人な主人公の描かれ方がすごく魅力的だったんです。
さらに年齢を重ねて読み返してみると、そんな主人公たちの大人ならではの素直になれなさに感情移入することができました。歌舞伎町の歓楽街の描写など、大人になったからこそ理解できる部分も多いですからね。同じ作品でも違う視点で長く楽しめるのが、魅力だと思います。

(C)北条司/NSP・「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会
フランスでも『シティーハンター』が人気の理由
――そんな広く愛されている『シティーハンター』をフランスのフィリップ・ラショー監督が実写化しました。
最初に話を聞いたときは「すごい度胸だな」というのが率直な感想でした。リョウは描くのも演じるのも難しいキャラクターです。強いけれどパートナーの香からお仕置きされる弱さもあり、ハードボイルドだけれどコミカル、いろいろな女性が好きなようだけれど香に対しては純粋、ワイワイと騒ぐけれど、孤独をかかえた人間である。
記号化されたアニメでも難しいのに、それを実写で監督し、しかも自分が主演を務めるんですから。超難問に挑む勇気がすごいなと思いましたし、心臓が強いんだろうなと。でも実際お会いすると、繊細に考えを深めていく方だなという印象でした。

(C)AXEL FILMS PRODUCTION-BAF PROD-M6 FILMS
――若林さんはラショー監督とトークショーを行ったんですよね。
「シティーハンターの夕べ」というトークショーに登壇し、その後、打ち上げでもラショー監督といろいろ話をさせていただきました。そのとき監督の言葉で印象的だったのが「フランスでも最初は実写化にすごく批判があった」ということを話してくれたことでした。まず実写化というニュースで批判があったようですが、ティザーや予告編が公開されて、さらにその声は強まったんだそうです。パリで行われたコミコンでお披露目されるまで不安だったと言っていました。
フランスでは今年2月に劇場公開された映画ですが、ときを同じくして、日本ではアニメの『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』が公開されるというのもすごく重圧だったと話してくださったんです。そういった苦しみの部分も率直に語ってくれる人柄に、すごく感銘を受けましたね。
――でもフランスで公開されると、あっという間に動員100万人を超える大ヒットを記録したんですよね?
大きな要因はやっぱりラショー監督の『シティーハンター』に対するリスペクトだと思います。インタビューでも「なるべく原作に忠実にしたい」と話していました。ご自身にとって日本の漫画、アニメの実写化はこれまでガッカリするものもあったそうで、この作品にかける思いが強かったんだと思います。出来上がった作品を観ていただけると分かりますが、本当にラショー監督の愛情が伝わってきますよね。

(C)AXEL FILMS PRODUCTION-BAF PROD-M6 FILMS
――若林さんは、フランスに住んでいたとお聞きしましたが、ただですら難しい漫画、アニメの実写化、しかも違う国の作品の実写化でありながら、『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』がこうして結果を残せたことには、どんな要因があるとお考えですか?
僕は2000年代にフランスに4年間住んでいたのですが、アニメの仕事をしていたので、現地でどんな作品が人気だったのかはチェックしていました。90年代にフランスのTF1という地上波テレビチャンネルで『クラブ・ドロテ』という子供向け番組があって、そのなかで『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢』『北斗の拳』などと一緒に『シティーハンター』も放送されていたんです。
当時『シティーハンター』は、『ニッキー・ラーソン』というタイトルで放送されていて、冴羽リョウはニッキー・ラーソン、香はラウラという欧米人の名前に置き換えられていました。たぶん日本のアニメだということを知らないまま視聴していたフランスの方も多かったんじゃないでしょうか。後づけにはなってしまいますが、こうした放送の仕方が、今回すんなりと現地で受け入れられた要因のひとつかもしれません。
――ほかに、何か特徴的なことがありますか?
北条先生の原作漫画の良さは何よりも大きいですよね。冴羽リョウという破天荒なキャラクターの魅力はもちろんですが、北条先生が描く人物は、理想的な体型で端正にデザインされている。フランスをはじめ外国でも、直感的に格好良くて美しいと思えるキャラクターですよね。またもうひとつ、北条先生の作品は『クラブ・ドロテ』が開始する前の80年代から『キャッツ・アイ』がフランスのテレビで放映されていたんです。北条先生の作品がフランス人に浸透していたことで『シティーハンター』もすんなり受け入れられていたのでは……とは感じますね。

――劇場版アニメと、実写映画……まさに「シティーハンターイヤー」にふさわしい盛り上がりですね。
ラショー監督の作品は、日本の漫画、アニメを海外で実写化する上でのひとつのモデルケースになるかもしれません。またアニメの方も、『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』をきっかけにこれからも盛り上がっていくことになれば嬉しいですね。
プレゼント応募要項

映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』ポスター
映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』の公開を記念して、『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』のポスターを抽選で2名様にプレゼントいたします。
応募方法は下記の通り。
(1)エキサイトニュース(@ExciteJapan)の公式ツイッターをフォロー
(2)下記ツイートをリツイート
応募受付期間:2019年11月27日(水)~12月11日(水)18:00まで
映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』の公開を記念して、同作品の劇場ポスターを抽選で2名様にプレゼント#シティーハンター
応募方法:@ExciteJapanをフォロー&当ツイートをRT
締切:12月11日(水)18:00までインタビュー記事はこちらhttps://t.co/eUcCEH9w3H pic.twitter.com/sMEOMwT7as
— エキサイトニュース (@ExciteJapan) November 27, 2019
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(エキサイトニュース編集部)
リリース情報
「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」
Blu-ray&DVD発売中
(C)北条司/NSP・「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会
「シティーハンター2」 Blu-ray Disc BOX
2019年12月25日(水)発売
(C)北条司/NSP・読売テレビ・サンライズ
原画展覧会情報
原画展覧会「劇場版シティーハンター PRIVATE EXHIBITION」
場所:あべのハルカス近鉄本店 ウイング館4階 第2催会場
期間 :2020年1月9日(木)~1月20日(月)
https://cityhuntermovie-exhibition.com
映画情報
映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』
11月29日(金)全国ロードショー
監督・主演:フィリップ・ラショー(『世界の果てまでヒャッハー!!』)
(C) AXEL FILMS PRODUCTION - BAF PROD - M6 FILMS
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:http://cityhunter-themovie.com/
▼ストーリー
ボディーガードや探偵を請け負う凄腕のスイーパー「シティーハンター」こと冴羽リョウは、相棒の槇村香と日々さまざまな仕事を受けている。ある日、掲示板に書き込まれた「XYZ」宛の新しい依頼。その依頼人の男ドミニク・ルテリエからリョウと香は、仕事の話を聞く。それは、ルテリエの父が開発した香りを匂った者を虜にする「キューピットの香水」を悪の手から守ってほしいという依頼だった……。
Profile
若林豪1979年生まれ。東京都出身。高校、大学の4年間をアメリカですごした後、上智大学卒業。東映アニメーション入社後、海外営業として4年間フランスに駐在する。テレビアニメ『ドラゴンボール改』(2010-2011年)で初プロデュース。主な作品に『聖闘士星矢Ω』(2012-2014年)、2016年公開の『映画 プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪奇跡の魔法! 』などがある。2016年よりアニプレックスに所属し『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』(2019年)のプロデューサー。国際エミー・キッズ賞アニメーション部門審査員(2016-)。
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November 27, 2019 at 04:00PM
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